KENJI HIROTA PHOTOGRAPHY

房総半島カメラマン・ヒロタケンジ

ミャンマー・チン州ミンダ村(2) 顔面入れ墨村の女性達

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約6分

▼放浪112日目 2014/3/29(土)
ひょんな事から泊まる事になった、山奥にあるペンションで迎えた朝は、とても爽やかで陽の光が眩しく美しかった。
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それなりのお値段がした事もあり、食事や宿の設備、ロケーションは抜群であった。
宿泊した宿→「Pine Wood Villa
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宿の朝食を食べ終え、昨日行けなかったミンダ村へ次こそは、という気持ちで車に乗り込む。
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3時間程急坂の多い山道を走ると、車は停車してガイドらしき大男シュポシュポマン(※)が降りろと言う。
(※)シュポシュポマンの名前の由来は前回の記事を参照されたい→前回のリンク

小さな民家に案内され、聞くとここに入れ墨の女性が居るとの事。
はじめてシュポシュポマンがガイドらしい事をしてくれた事に驚いた。

さらにミンダ村にたどり着く前に、こんなに早く会えるという事にも驚く。
 

民家の中から小柄な年配の女性が出てきた。
遠目からはわからなかったが、たしかに顔に入れ墨をしている。

写真をお願いしようと気持ちばかりのチップを渡すと、民族衣装に着替えるとの事で一旦奥に引っ込んだ後、再度出てきて写真を撮って貰う。
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この時「出会えた」という一点で私はかなり満足していた。
例えるなら大好きな芸能人に初めて会った時のような感じだ。
いや少し違うか。

 
首長族へ行った時も思ったが、この村の人は我々をどう見ているのだろうか。

「また変なやつらが来おった。見世物じゃないのに。」だろうか。
「村の文化に興味を持ってくれてありがたい。」だろうか。

どこへ行っても相手を尊重し礼節をわきまえて行動していれば失礼になる事は無いだろう。
という気持ちも結局は自己満足でしか無く、写真を撮る事を不快に思い、実際心は傷ついているかもしれない。

直接コミュニケーションが出来れば良いのだが。
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更に1時間程車を走らせると、遠くの山の上にミンダ村が見えてきた。
こんな険しい山の上に村があるとは信じられない。
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向うの山へ登るには、まず下らなければならない。
山の下まで降りると南アルプス天然水のような透明な川が流れ、その上に鉄橋がかかっている。ここで小休止をする。
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通り過ぎる村人の写真を撮らせてもらう。
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ギザギザの山道を1時間程登り、ついにミンダ村に着いた。
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村は山の上にあり、太陽に近い為か日差しが強く、とても暑く感じる。
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昼食を取った後、シュポシュポマンがガイドを雇うかどうかを聞いてきた。

私はシュポシュポマンがガイドだと思っていたので、「あなたが村を案内してくれないのか?」と聞くと、「私は村の事は知らない。」との回答であった。

何故だ?この男は何のために来ているのだ?とも思ったが、そうか車をシュポシュポする為だと自分を納得させる。

地図もなくどこへ行けば村人に会えるのか検討もつかない為、せいちゃんと相談しガイドを雇う事に決めた。
ガイド代は一日50ドル。しかし半日なので25ドルにしてもらった。

ガイドはミンダ村の生まれで、26歳の若者。顔の彫りの深いイケメンであった。
英語が堪能すぎて話していることが2割、3割しか聞き取れない。
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イケメンガイドに村を案内して貰い、沢山の入れ墨の女性に会う事が出来た。
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このおばあ様は最長老との事。鼻笛も披露していただいた。
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女性達が入れ墨をする理由は多々あるそうだ。
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一つは、他人の村の男に奪われないように、結婚した女性に入れ墨をするようになったというもの。
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一つは、難しく忘れてしまったが、顔に入れ墨をする女性は選ばれた人で、死んだときに山の上にある祭られた門を通り、精霊として生まれ変わる事が出来る?などの事を言っていたが、英語力が無く不確かである。詳しくはせいちゃんへ、または実際にガイドに確認されたし。
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ある民家に行くと、弓を見せてくれた。
弓矢には猟で使う”動物用”のものと、人に向かって使う”リベンジ用”の弓矢があると教えてくれた。
なんとも恐ろしい事である。
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子供達はいつでも、どこでも可愛いく、元気いっぱいだ。
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村の資料館に入ると、ミンダ村に関連した様々な小物が展示してあった。
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印象に残ったのはこのエレファントキラー。
象を殺す道具だそうな。
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日本軍の刀と銃が置いてあった。
こんな山奥の村まで日本軍が攻めていたという事に、驚きと共に申し訳ないような気持ちになった。
と同時にビルマと日本との歴史を知らない自分の無知さが嫌になってくる。
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日が暮れだしてきた為、入れ墨村の観光は終わった。

もう一泊すれば、朝の市場や数時間歩いた距離にある村で観光も出来るとの話であったが、今回は時間の関係で断念する事にした。

また数年後にでも訪れてみたいと思えた場所であった。

 

▼放浪113日目 2014/3/30(日)
朝、宿の前で高倉健似のドライバーさんと、シュポシュポマン、せいちゃんとで記念撮影を撮った。
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長い旅がもう終わりつつある。
せいちゃんは風邪気味もあって、かなり衰弱している様子だった。
それなりにハードな旅だったかもしれない。
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私は帰りの車窓からの景色も逃すまいとシャッターを押し続けた。
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目に映る風景が新鮮で、しかしその感動の瞬間をシャッターに収めきれずもどかしい。
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途中シュポシュポマンがこの街で女を買わないかと誘ってきた。
こちらは疲れているし、そんな気は毛頭無いので、「お前一人で勝手にシュポシュポしてろよ!」と日本語で罵った。
それでも憎み切れないのがシュポシュポマン、本名ショーイさん(36)の良い所である。
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高倉健さん似の運転手はとても無口だが、車を丁寧に掃除している姿から仕事を愛しているなと感じた。
昨晩、夕飯の約束で19時に来るはずの迎えが来ず、宿の人に連絡して遅れて来たとき、恐らく唯一知っている英語で「ケン、アイムソーリー」と声を掛けてくれた事が印象に残っている。
渋くて良い親父さんだった。クンサンさん(45)
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ショーンさん、クンサンさんに別れを告げ、バガンの宿で休憩していると沢山の日本人が居た。

私は鼻息荒く入れ墨村の事を話すと、その日本人達は誘い合って早速翌日にはジープで向かって行った。
自分の話に影響を受けて、行動してもらう事はとても嬉しい気持ちになる。

旅のプランを事前の確認してから行った方が良いよ、と先輩風を吹かしてアドバイスをした。
 

こうして入れ墨村の日々が終わった。

振り返ると、大きなトラブルがあった訳でも無く、強烈な出来事は起こっていないのに、何故か自分の中で特別な日々として印象に強く残っている。

それは、入れ墨をした女性達の存在そのもののインパクトが強かったからかもしれない。

ミャンマーでの大きな目的を達成した私は、心地よい疲労感と満足感に浸りながら眠りについた。

つづく

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