KENJI HIROTA PHOTOGRAPHY

房総半島カメラマン・ヒロタケンジ

【体験談-遺跡発掘作業員バイト】歴史的ドキドキと単純作業の退屈さ、寒さと泥まみれを乗り越えた4ヶ月間まとめ

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約10分


2019年11月から4ヶ月、わたしは遺跡発掘調査の仕事をしていた。
デスクの上で土器の破片をパズルのように組み合わせたり、発掘現場でスコップを使い土を掻き出す肉体労働まで。

ハケでササッと砂をのぞき慎重に土器を取り出す・・みたいな、エジプトの発掘現場をイメージしたが、
実際は寒空のしたで、泥だらけになる、土木作業に似たワイルドな仕事であった。

土器が発掘してワクワクしたり、単純作業にうんざりして、めちゃめちゃ飽きたり。
そんな遺跡発掘作業の中で、私が体験した辛かったこと、楽しかったことなどを紹介してみたい。

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遺跡発掘調査をはじめたきっかけ

わたしは何故、遺跡発掘作業員をやることになったのか。
ある日、友人からのLINEで「遺跡発掘調査の仕事やらない?」と紹介を受けたのがはじまり。
メッセージをみた瞬間「やってみたい(ゴクリ)」と心が動いた事と、すぐに募集を締め切られてしまう可能性があることから、即座に名乗りをあげた。

勢いで決めたものの、旅や移動が好きな私が同じ場所に4ヶ月も拘束されるのか・・・と抵抗があったが、
時に縛られるのも一興、、、と、仕事を始めることにした。


遺跡発掘の仕事は大きく二つに分けられる。
一つは多くの人がイメージする、発掘現場の外で土を堀ったりする、肉体労働のグループ。
もう一つは、調査室に入り机で土器を洗浄や接合・記録を行う、デスクワークのグループ。

現場と調査室。運良くこの二つの仕事を経験できたので、以下に紹介したい。

遺跡発掘調査員バイトの給与・時給

遺跡発掘作業員の時給は以下の通り。
休みは事前に言えば柔軟に調整してくれた。
わたしはカメラの仕事も並行していたので、何度か休んでしまいフルで14日間出勤は叶わず。

時給:1,148円(日給は6,888円)
月給:96,432円(最大14日間の場合)
交通費:ガソリン代支給
勤務時間:9時〜16時(6時間勤務・休憩1h)

遺跡発掘調査の仕事内容(現場編)

はじめは調査室でデスクワークをしていたが、次第に外に出て体を動かしたくなった。
上長に「現場に・・出たいです・・・」と何度か要請すると、2月から遺跡発掘現場の配属となった。

現場での1日の流れ

発掘現場での平均的な1日を紹介したい。

□ 9:00 出勤
発掘現場に車で到着。
いつも6時半頃に起床しお弁当を作り、8時に家を出る。
現場到着しみなに挨拶をして、作業に必要な道具を準備。
すぐに作業開始。

□ 10:15 休憩
午前と午後で15分休憩がある。
自前のキャンプ用の椅子に腰をかけて、先輩方(50代〜70代)と談笑する。
持ち寄りのお菓子が一同に集まるので、テーブル上は賑やかだ。

□ 12:00 お昼
お昼はそれほど時間が無いので、手短に済ませる。
弁当を食べて、共に働く先輩方と談笑をする。
ヘトヘトに疲れる時は、椅子の上で仮眠する事も多々。

□ 14:15 休憩
全身を使う仕事は疲れる。がんばりどき。

□ 15:50 後片付け
終わる10分前に終了の合図がかかり、工具の片付けを行う。

□ 16:00 勤務終了
ほぼ残業はなく、時間ぴったりに退社(退現場?)ができる。。

ここからは、現場でどういう作業をしていたかを解説したい。

①休憩所のテント設営

ドキドキの遺跡発掘現場の初日は、冷たい風が吹き猛烈に寒かった。
ワークマンで買った厚手のズボンと防寒着に身を包んでさえも、体の震えは止まらない。
極寒の初日は、テントの設営からはじまった。

休憩する為のテントで、単管パイプとクランプを組み合わせブルーシートを被せるだけの簡易的なもの。
この中にキャンプ用の折り畳みテーブルと椅子を並べ、休憩やお昼ご飯を食べる。
風の強い日は、ブルーシートがバサバサ!と波打って煩くて仕方がない。

試行錯誤しながら手作りした休憩所。見た目は難ありだが、風と陽を防げれば十分。
ここでお昼休憩や15分休憩を行った。

むかしは上野公園にこういうの沢山あった

②試掘(トレンチ調査)

遺跡の発掘現場は、サッカーのフルコート並に広い。
この広いエリアのどこに遺構(古代の生活跡)があるか、試掘(トレンチ調査)を行う。

遺跡発掘に特化したオペレーターがショベルカーで穴を掘る。
2m×5mの大きさで、深さ1m〜2m程度まで掘り進められる。
(われわれ作業員は見守ることしかできない)

ショベルカーは遺跡専任のオペレータがやるそうな

③山崩し

ショベルカーで掘削した土は、すぐ横に山積みにされる。
この土の山の中に遺構が混じっている可能性があるので、人の手で「山崩し」を行う。
わたしの今回の現場は、この作業が7割を占めていた。
小さな鋤簾(じょれん)という道具を使い、土の塊を粉砕し土器等の遺物がないかを確認する。
ずっとやっているとシンドイ作業。

めちゃめちゃ飽きた

④壁きり・鋤簾(じょれん)がけ

遺構が確認できなかった穴はすぐに埋め戻す。
遺構の確認できた穴は、記録に残す。

ショベルカーで掘削した穴は、表面に砂利や泥で汚い状態。
壁の地層や表面の地層を露出させるために、綺麗に掃除する作業。
けっこう好きな作業。

表層の砂利や小石を綺麗に削り取る

⑤ポンプで水出し

ショベルカーで掘削していると、水脈にあたり水が溢れ出ることがある。
また前日の雨で、水が溜まってしまう事がある。
トレンチ(穴)によっては、ポンプで抜き取る作業が必要になる。
これもなかなか楽しい。

水がすいあげられ上にジョバジョバー!と出る

⑥図面書き(記録)

遺構が確認できたトレンチ(穴)は、記録をとる。
穴の深さ。地表に出た遺構の座標。穴の側面に出ている地層の記録(セクション)。

一番喜びを感じたのが、レベル(高さ)を測る時に、測量機を使わせてもらったこと。
街の道路で黄色い機械から覗いているのを、よく見ていたが自分もできる!と心震わせた。

工事現場でみる測量機。望遠鏡になっていて、覗いてメモリをみる

現場での作業はこんな感じ。
今回はあくまで試掘。本調査の作業はまた全然違うらしい。

次に、調査室でのデスクワークの仕事を紹介したい。

遺跡発掘調査で経験したこと(調査室編)

11月中旬からはじめた遺跡発掘の仕事は、調査室でのデスクワークが最初の仕事だった。
パソコンを使いAdobe Illustratorで、土器の輪郭のトレースをするのが主な作業だった。
他にも、土器の洗浄・接合なども体験させてもらった。
以下に一連の作業を紹介したい。

①遺跡(土器・瓦など)の洗浄

遺跡発掘現場から発掘された遺物(土器や瓦など)は、調査室へ運ばれ洗浄作業をする。
泥と土にまみれた土器を大きなブラシで、細かい箇所は小さなブラシを使い汚れを落としていく。
寒い時期だったので、お湯を混ぜて暖かくして洗った。

②注記

洗浄した土器に、極細の筆を使い「注記」作業を行う。
どこの遺跡のどの場所で出土したかを、白インクで小さく小さく記す。
描いた文字の上に、ニスを塗り定着させる。
米粒に文字を書く、みたいな作業。

③接合作業

一番好きだった、接合作業。
バラバラになった土器や瓦の破片を、元の形に修復する作業。
土器の色も様々で、百個以上ある破片を、ジグソーパズルのように組み合わせる。
瓦はまったく組み合わさらない。
土器は立体的になっていく過程は楽しい。

④実測(記録)

ある程度大きな土器や、接合により形作られた土器は、方眼紙に実寸で記録をする。
デッサンにも似ているが、微妙なカーブや模様の間隔も数ミリ単位で記録していく。
(この作業はわたしはやった事がない。)

⑤デジタル化

方眼紙に記録された土器の絵を、スキャナで取り込んでデジタル化。
データをパソコンで読みとり、Adobe Illustratorを使いトレースしていた。
発掘された場所の報告書を作るための作業である。
調査室では一日のほとんどをこの作業に費やした。

⑥遺物の撮影

記録に残す特定の土器は、写真に残す。
三脚と背景紙や照明を揃えて、本格的に撮影をする。
わたしはカメラマンだが、別にカメラマンがいてその補助をさせてもらった。
物撮りは仕事としてそんなにしてこなったので、興味深く拝見した。


以上が、調査室での作業である。
ここからは、発掘作業においての感じたことなどを書いてみたい。

遺跡発掘作業員で辛かったこと

良い事もあれば悪い事もあるのが人生。遺跡発掘も同様。
仕事をしていて辛かったことなどを列挙してみたい。

猛烈な寒さがツライ

11月から開始した遺跡発掘調査は、猛烈な寒さからはじまった。
長靴の下にホッカイロを入れて、厚着しても震えはとまらない。
外なので電子レンジはなく、ガタガタと箸を震わせながら冷たい弁当を食らう。
熱いお湯を用意して、カップラーメンを食べればよかった。

ドロドロになるのがツライ

湧水や雨水により、ショベルカーで掘った穴はドロドロになる事が多い。
長靴を履いているが、まるで田んぼに入っているかのように足を取られることも多々ある。
顔にもべたっと泥がつき、ワイルドな感じになる。

単純作業がツライ

初日はワクワクして、胸の高鳴りが抑えきれなかった遺跡発掘の仕事。
しかし、同じことを繰り返していくと、次第にその高鳴りは消え、退屈な気分になっていた。

遺物(土器や瓦)が出れば良いが、作業して1日なにも出てこない日も多い。
5ヶ月は流石に長すぎてしまったか・・・おれここで何やってるんだろう・・と絶望のような感情を抱く事もあった。

遺跡発掘作業員で楽しかったこと

嫌な事、ツライ事もあったが全体を振り返れば、概ね楽しい時間を過ごす事ができた遺跡発掘調査の仕事。
楽しかったことを紹介したい。

冒険心や浪漫が溢れる

「遺跡発掘」というキーワードを聞いただけで、ワクワクしてこないだろうか。
インディージョーンズやマスターキートンをみながら育った私は、トレジャーハンターになったような気分で、遺跡発掘作業をしていた。

先輩方(50代〜70代)の話が聞ける

遺跡発掘で共に仕事をするメンバーは、高度経済成長期の日本を知る大先輩方。
いまはシャッター街になっている、かつて反映していた駅周辺の話や。
おすすめのカフェや飲食店。安いスーパーの情報など。
インターネットには流れていない、生の情報(ただの雑談)を得る事ができる。

体動かす喜び

普段こうしてパソコンでカタカタやる作業が多いので、お天道様の下で体を動かすのはとても気持ち良かった。
夕方の時刻に終わると、すぐにジムへ行ってさらに汗を流して、シャワーを浴びる。
充実した一日を感じる。

遺跡発掘作業員バイトを振り返る

という事で紹介させてもらった、遺跡発掘調査員の仕事。

はじめて土器を手にした時、古代の空気に触れたような気がした。
土器の形や模様には歪みがあって、そこに不器用な作り手の温もり、人間臭さを感じた。
古代人が粘土をこねて作る風景を想像する。
数千年の時を超えてそれを手にする自分。

私が土器を手にしたとき、心は当時の世界へタイムスリップする。
土器を作った古代人からみたら、私は未来人なわけである。
土器を使って通信しているような・・・、なんというファンタジーでロマンティックなんだろうか。

そんなことを、遺跡発掘の仕事をして感じたのだ。

本記事をご覧の皆さんも、人生で一度は遺跡発掘を経験してみてはいかがだろうか。
後半へんな感じになって、まとまらなかった。

以上、おしまい。

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