世界放浪2年の中盤、中央アジアのキルギス共和国をを旅していた私は、
南東部のナリンから出ている「チャタルクル湖トレッキングツアー」へ参加する事に。
想像を超えて過酷な山道は、私にとって辛いトレッキングとなった。
日の入りギリギリで到着し、宿で食べた食事が今でも忘れらない味でだった。
そんなチャタルクル湖トレッキングの旅行記である。
キルギス全体の観光・47日間の旅のまとめは、以下の記事をご覧ください。
👉キルギス旅行47日間!絶対行くべき息を飲む絶景の湖や観光情報など
※本記事は2014年8月に滞在した情報を元に作成しました
ビシュケクからナリンへ
▼放浪257日目 2014/8/21(木)
申請から一か月でようやくイランVISAを取得出来た私は、ようやく羽を伸ばして移動できる。
チャタルクル湖へ向かうため、首都ビシュケクから南の田舎街ナリンへ移動する。
南旅館の同部屋だったヒガシさん(仮名)と、
ロバ旅で有名なマサトさんと共にバスターミナルへ行く。
マサトさんは旅中にお世話になった家族へお礼しに行くとの事で別の村へ、
私はヒガシさん(仮名)と共に約4時間で南のナリンへ向かう。運賃300ソム(585円)。
ナリンで宿泊した宿
事前に調べていた宿は潰れていて、他を探し彷徨い歩いていると、突っ立っていたおばちゃんが勧誘をしてきた。
誘われるがままに雑居ビルに案内され入ると、民宿のような雰囲気でゆったりと広く清潔感があった。
しかし値段は一泊700ソム(約1,365円)。キルギスにしては少し高めの値段。
場所は中心地から東へ行き橋を渡って5分程のこの辺り。恐らく民宿なので看板は無い。
後日もっと安い宿があったので、そちらをお勧めする。
チャタルクル湖トレッキングツアー申し込み
▼放浪258日目 2014/8/22(金)
今回の旅の目的地はキルギスの南にある中国との国境が近い「チャタルクル湖」である。
標高4000mの山を越えたその向こうに湖があり、一泊か二泊するという計画であった。
朝、観光案内所からシェアタクシーで、登山道の入り口にあたるタシュラバットという観光名所へ向かった。
タシュラバットからトレッキングスタート
お昼前後に到着した。※往復で1人当たり933ソム(約1820円)。
ここはかつてシルクロードの中継地点の隊商宿として使われた建物が残っていて、
その周辺にはユルタ(遊牧民の住居)が点在しており、ここで泊まる事も出来る。
チャタルクル湖へのトレッキング開始
タシュラバットの観光は帰りにするとして、すぐに湖を目指して登山を開始する。
道中にはフランス人やスイス人等、国際色豊かな人々が見える。
景色は感嘆の声を上げてしまう程素晴らしい。
自分が小人になったかと思えるくらいに背景の山々が大きく雄大だ。
4時間程歩くと、標高が上がるに従って草が無くなり、岩や砂利が多くなりその景色は荒々しくなってきた。
傾斜も高くなり、一緒に歩いていた皆と距離がつきはじめ1人で孤立する事が多くなってきた。
そして体力も限界に近く足がガクガクと言い始めている。
途中で道を間違えてしまい、来た道を戻りまた急坂を登る事、1時間。
標高4000Mの頂上到着。遠くにチャルクル湖が見える
ようやく山頂に着いた。標高は約4000m。
猛烈な風が吹き、遥か遠くに目的地のチャタルクル湖がに見える。
だが宿泊予定のユルタがここからどこにも見えない。
もう日が傾き始めていて時間が無い。急がなければいけない。
景色を楽しむ余裕も無く、駆け下りるように山を下った。
足に力が入らず2度3度と尻餅をつき、靴は岩で擦れて穴が空いてきた。
歩けども歩けども宿が見えず、日が暮れるにつれ焦りも出てきた。
寝袋を持っているので野宿も考えねばならないだろうか。
いやこの寒さの中では厳しいだろう。
私はこれ以上ない程の疲れで歩みが遅く、皆は遥か遠くの丘で先を歩いている。
どうか置いて行かないでくれ、と心で叫んだ。
日暮れ前、目的地の宿に到着。飯が、うまい。
20時過ぎ。日は暮れてしまったが、なんとか薄夕暮れの状態で宿に着く事が出来た。
足取りがおぼつかずフラフラで辿り着いたので、迎え入れてくれた宿のご主人は「君は酒でも飲んでいるのか?」と冗談まじりに言われてしまった。
倒れこむように宿に着き、かきこむようにご飯を食べた。
パンも紅茶も何もかもうまい。
五臓六腑に染み渡った。
それにしても明日、この疲労状態であの来た道を引き返すのは無理かもしれない・・・。
と不安をおぼえながら転げ落ちるように眠りについた。
遊牧民の家「ユルタ」で起床
▼放浪259日目 2014/8/23(土)
朝目覚めると、昨日痛かった足もそれほどでも無く思った以上に体調が良い。
しっかりとした食事と睡眠のおかげでだいぶ回復したみたいだ。
今日は行けると確信した。
朝食が用意されたとの事で、寝室のあるユルタからトラックのような住居へ入る。
卵焼きと、食べ放題のナンと、それに付随してジャムがついている。
紅茶も飲み放題である。
シャワー無し、Wi-Fiなし、人が多い場合2人で一つの布団に寝る。
晩御飯と朝食付きで一泊、1000ソム(約1950円)。
宿泊したユルタは夜は寒いが、暖炉のようなものを炊いてくれて暖かい。
宿の周りを少し散策してみたが、肝心のチャタルクル湖への距離がかなりあり、歩いては時間が掛かるらしい。
午前中には出発の予定だった為、肝心の湖を楽しめなかった。
絶景のチャタルクル湖(Chatyr-Kul)周辺
湖を楽しむ事は出来なかったが、周辺は絶景と言える景色が広がっていた。
とにかく広大なのである。
10時頃、宿主に別れを告げ、昨日と来た道を戻る。
今日は体力的にも時間的にも余裕があり、景色や写真を楽しむことが出来る。
疲れたので山の中腹にある岩の上で休憩していると、風が無く動物もおらず異常に静かであることに気付いた。
耳がキーンとなる程の空間に座り、随分と異世界に来てしまったものだと物思いに耽った。
しばらく、迫力のある山々をぼんやりと眺める。
時折振り返ると、こんなどでかい山を登ってきたのかと驚いてしまう。
標高が下がり小川が見えはじめ、行く時には気づかなかった景色が見えて、とても楽しい。
タシュラバットに帰着
夕方16時頃に、スタート地点のタシュラバットに辿り着いた。
少しここの観光をしてみる。
内部は思ったよりも広く、寝室や台所、馬小屋の部屋を見ると昔の情景を想像させるようで興味深いものだった。
ここでかつてシルクロードを旅してきた人々が疲れを癒していたのだな、と遥かな時代に思いを馳せる。
くたくたになりながら、夕方にはタシュラバットの観光を終えナリンへ戻った。
チャタルクル湖トレッキングを振り返る
日本に居た時に日帰り登山はかなりしていたので体力はそれなりにあるつもりであったが、
人生の中で最も厳しく辛いと感じた登山であった。
厳しい登山ではあったが、高くそびえる山々の景色はここでしか見れないようで、とても楽しむことが出来た。
もう一度行きたいかと言われると答えは否だが、一度は訪れて損は無い場所だ。
また馬で登れるツアーがあるようなので、体力的に厳しい人はこちらもお勧めである。
明日はゆっくりと、滞在しているナリンの街を楽しむ事にする。
つづく
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