KENJI HIROTA PHOTOGRAPHY

房総半島カメラマン・ヒロタケンジ

【ピレネー山脈超え】26キロ踏破で限界を超えた肉体【カミーノ1日目】

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約7分


2年の旅の中で最も心を熱くさせてくれた、スペイン巡礼31日間の旅の記録1日目です。
これから巡礼する人や、興味がある人へ向けて、旅の参考になればと思います。

サンティアゴ巡礼ってなんなの?という人は、以下の記事をはじめにご覧くださいませ。
スペイン巡礼31日間!絶景・友情・感動の780キロを超えたサンティアゴ巡礼の費用と絶対に行くべき5つの理由
冬のスペイン巡礼-準備編・旅に必要な持ち物や情報

・本記事は、2015年1月~2月に旅した情報を元に作成しています

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サンティアゴ巡礼の朝

(前回の続き)
昨日、フランスのパリからバイヨンヌ経由で、「サンジャンピエドポー」に到着。
巡礼手帳を購入して、アルベルゲ(巡礼宿)にワクワクしながら寝袋に潜り込んだ。

▼放浪397日目 2015/01/08(木)
—07:00—
起床。この時期のヨーロッパは日が短く、まだ夜も明けていない。

宿泊しているアルベルゲ(巡礼宿)は、基本的に連泊する事が認められていない。
スタッフも別の仕事の合間でやっている人も居て、受付は15時〜22時までだったり、チェックアウトも8時半には宿を出なければならないところが多い。(天候・怪我や病気などで認められる事もある)

この宿も同様に、8時半のチェックアウト。
旅のはじまりである今日は、オスピタレロ(管理人)が7時半に集合をかけて、巡礼についてや次の目的地への説明があった。
皆テンションが高く、それにつられるように自分の心もドキドキである。

1日目は、サンジャンピエドポー(Saint-Jean-Pied-de-Port)からロンセスバリェス(Roncesvalles)の26キロを歩く。ピレネー山脈を超える、初日から過酷なルートと言われている。
積雪や天候の影響で、登山道が閉鎖される場合は自動車道のルートを歩く事があるが、今回は運良く天気も良好なので登山道を進めるようだ。

標高差1200m。巡礼路の中でも最初で最大の難所と言われている。

出典-http://www.caminoadventures.com/camino-frances/st-jean-to-roncesvalles/

総重量25キロのバックパックを背負って

25キロの全荷物のバックパックとサブバッグを背負い、いざ出発!という時に、管理人が仰天したように私に言った。
「あなたそんな荷物で行くの?やめなさい!クレイジーよ!」

他の巡礼者、特にアイスランド人のジェームスも執拗に助言してくる。
ケンジ、その荷物で歩くのは無理だ。郵送しなさい。

不要な荷物は、ゴール地点の街へ郵送できる事を知っていた。
私は歩くのが好きである事。これは自分のチャレンジである事(This is my challenge!!)を伝えてその場を押し切った。
宿代10ユーロ(1450円)を支払い、管理人と記念撮影をしていよいよ旅立ちである。

サンティアゴ巡礼出発の時

—08:00—
出発の時間。まだ朝日が昇りきっていない暗い道を歩く。

田舎なので、町を離れるとすぐに山々の景色が見えてくる。
歩き始めは、体がかなり冷える。

山の先端から日の光が当たり、ようやく日が出てきた。

少し高台から小さな村々が見える。心がすっきりと洗われるように気持ちの良い空気である。

朝はあんなに寒かったのに、もう暑くなってきた。分厚いアウターを脱ぐ。
割と調子良く歩いていたが、少しずつ坂が増え始め息が上がる。荷物も肩に食い込むようだ。

優しいアルゼンチン人のサンティアゴは、歩くペースを合わせてくれ、辛い私を心配そうに見守り応援してくれた。
「サムライ!サムライ!」と盛り上げてくれた。彼は母国で先生をやっている。

—09:30—
5キロ地点の[Huntto]に到着した。ここにもアルベルゲはあるが冬季は閉まっている。
坂道がずっと続き、すぐに体が悲鳴をあげては休憩をとる。

たまたま出くわした、アイスランド人のジェームスも合流して一緒に休む。
ジェームスは私を見ると「ケンジ!荷物を送りなさい!」と本当にうるさい。

景色がとにかく美しいのであるが、なかなか楽しめる余裕がない。

しかし、一緒に歩いてくれるサンティアゴが音楽を聴かせてくれたり、話をしてくれるおかげでなんとか歩けている。
私のカメラを持ち出して、代わりに撮影してくれた。

Photo by santiago

休憩で死にそうな私も撮影してくれた。ありがとうサンティアゴ。

Photo by santiago

—14:40—
水飲み場に、宿で出会った人々が集まっていた。
大量の水を持参すると重くなるので水飲み場はとてもありがたく貴重である。
持っていたペットボトルに水を入れて補給する。

後から来たジェームスは火を起こしてお茶を淹れて皆に振舞っていた。
ジェームスは必要以上にテンションが高く、私の苦手とするタイプであった。

蓄積していく疲労

ただただ、一歩一歩進む。
歩いていると、荷物が肩や背中、腰にのしかかってくる。
もう限界だ・・と思ったらどっさりと荷物を置いて休む。
ひとしきり仰向けで休んだらまた背負って歩き始める。
それの繰り返しである。

山を越えて、森の中へすすむ。落ち葉の絨毯を踏めしめると、少しずつ日が暮れてきた。
共に歩いていたサンティアゴもいつの間にか姿が見えない。
私のペースはとても遅い。

もう5時間以上も歩いている。
いつになったら次の街ロンセスバリェス到着するのだろうか。。。

—17:30—
この時期のヨーロッパの日の入りは早く、もうあたりが暗くなってきた。
山の影で見えずらい道を進み、焦りを感じ始めた頃、ようやく人里らしき村に辿り着いた。

宿はどこだろうか。もう足が限界で、一刻も早く休みたい。
立っていられない・・・。(歩いてるけど・・・。)

ロンセスバリェス到着

教会のような建物が見えた。重厚な門をくぐりスタッフとおぼしき人物が見えたとたん、荷物に引っ張られるように倒れこんでしまった。
やっと到着した安心感で気が抜けてしまった。

這いつくばって巡礼手帳を出して、管理人にスタンプを押してもらう。このスタンプが無いと歩いた証明にならない。
一苦労でベッドへ移動し荷物を置いて、もうすぐ閉まりそうな近くのレストランへ入った。

感動的な美味さが体の中を駆け巡るような食事であった。
うざいジェームスに勧められるまま、普段は飲めないお酒も飲んでしまった。

なまりのように重い体を壁に預けながシャワーを浴び、這うようにして寝袋に潜り込んだ。

ようやくスペイン巡礼の初日が終わった。
最初で最大の山場と言われる、ピレネー山脈を超えることが出来た。
重さ25キロの荷物を背負い、山超え乗り切れたのだからこの後も楽勝だろう。
とはいえ、まだ700キロ以上も歩かなければならないと思うと絶望でしかない。

いや、先の事は考えず今日のところは眠る事にしよう。
明日の朝も早いのだから。

つづく

>>次の旅日記を見る

巡礼1日目データ
歩行距離・・・・・・25キロ(残り755.5キロ)
使ったお金・・・・・20ユーロ(宿10ユーロ、食10ユーロ)

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